陽子は叔母からの見合いの件で頭を抱えていた。叔母は今年30歳になる陽子に、自分の知り合いの息子と会ってみないかという。交際相手でもいれば断ることもできるのだが、もうかれこれ5年ほど彼氏はいなかった。相手は一回り年上の40歳だという。
「ちょっと年上だけど、ほら、陽子ちゃんどっちかっていうと、引っ張っていってくれる人のほうがいいって言ってたじゃない。」
電話で叔母が陽子を説得しようとする。ちょっと考えてみるとだけ言ったものの、どうするか考えあぐねていた。
年齢はさほど気にはならなかった。というのも、5年前の25歳当時に交際していた男性は45歳の妻帯者だった。陽子は二回りも年上の男と不倫をしていたのだ。といっても、最初は独身と思っていたのが、実は結婚していたという、よくあるパターンだった。妻子があることがわかったので、陽子のほうから別れた。
こないだまでは20代のうちに結婚出来ればと思っていたが、いざ30歳になってみるとそんな拘りはどうでもよくなっていた。不倫のせいで恋愛に対して臆病になっていたが、いつかは結婚したい気持ちもあり、しばらく考えて、見合いをすることにした。
土曜日の午後に、叔母から指定された駅前のホテルの1階にあるカフェに向かった。この辺りでは一番高級なホテルだ。大理石の立派なロビーを通り過ぎると、「アンデルセン」という喫茶店が見えてきた。窓際のテーブルに叔母と眼鏡をかけた女性、そして見合い相手の男性が座っていた。
「どうもすみません、遅くなっちゃって。」
約束の時間の前だが、陽子はなんとなく謝罪の言葉を口にする。叔母が立ち上がると、眼鏡の女性と男性に陽子を紹介した。
「姪の陽子です。こちらは伊藤健司さん。」
立ち上がった小柄な眼鏡の女性がにっこりと笑う。
「まあ、あなたが陽子さん。素敵な方ね。」
叔母の前の職場で一緒だった人で、伊藤健司はその息子だ。顔は正直、陽子の好みというわけではなかった。しかし、控えめながらも落ち着いた雰囲気で、第一印象は悪くなかった。見合いは見た目だけでなく、総合的な評価が重要になる。
「健司さんはX商事にお勤めですってよ。」
そう叔母が話を切り出した。X商事といえばプライム上場の一流企業だ。
「大学を出てから、18年勤めています。」
そう伊藤健司が続けた。18年もX商事に勤めていれば、給料も良いだろう。だが、逆にそんなに条件がいい人が、なぜこの歳まで独身だったのかという疑問も残る。性格的に問題でもあるのだろうか・・。
「陽子はデザイン関係の仕事をしていまして、今はチーフディレクターだっけ?そうよね?」
と叔母が陽子の紹介を始めた。真面目であることや、子供の頃おてんばだったことなど、お互いの経歴を披露しあう。話によると伊藤健司が独身なのは、奥手だかららしい。引っ張っていくという叔母の話とは違うようだが・・。
「陽子さんは物おじしないタイプみたいだから、健司とバランスがいいんじゃないかしら。」
どうやら伊藤健司は今日のお見合いを、心待ちにしていたらしい。陽子が見合いにのり気でない理由も、そこにあった。伊藤健司は照れ臭そうに頭を掻いている。陽子は愛想笑いをしながら、頬の筋肉がこわばるのを感じた。
コーヒーとケーキで会話がひと段落すると、叔母がおもむろに切り出した。
「じゃあ、あとは二人で静かな所にでも行ったらどうかしら。」
そういうと叔母はホテルの部屋のキーを、テーブルの上に置いた。棒状の透明のキーホルダーには、901と部屋番号が入っている。ここのホテルの最上階の部屋だろう。こういう場合、女性側の親族が切り出すのがマナーらしい。こんな娘ですが、お眼鏡にかなうかどうかご確認くださいということだ。それを受けて男性側の親族が返事をする。
「そうね、合うかどうか、お互いに確かめてきたら」
伊藤健司の母親は陽子のことが気に入っているようだ。陽子の心拍数が急速にあがっていく。伊藤健司も緊張のためか顔を赤くしている。心の準備はしてきたものの、いざとなると焦りがでてくる。
「すみません、ちょっとお手洗いに・・」
陽子はトイレに行きたくなって席を立った。
便器に座ると、ふっと不安な気持ちがよぎる。しかし、ここまで来たら後には戻れない。お見合いに「肌合わせ」はつきものだ。覚悟を決めると、陽子は下着についたおりものシートを剥がして、隅に置かれた汚物入れに入れた。
陽子がトイレから出てきたときには、3人はレジを済ませて喫茶店の入り口で陽子のことを待っていた。
「じゃ、健司さん陽子の事お願いね。」
叔母が伊藤健司に向かって言う。
「こちらこそ、陽子さん健司のことよろしくお願いします。」
そういうと伊藤健司の母親は陽子に頭を下げた。
二人をロビーまで見送ると、陽子と健司は9階に向かうためにエレベーターに乗り込んだ。健司の手にはさっきの鍵が握られている。高級ホテルのエレベーターだけあって、しっかりとエアコンが効いている。陽子の勤め先の雑居ビルのエレベーターように、涼しい風が顔に当たるような安物ではない。
「今日はお時間を頂きありがとうございました。」
伊藤健司は丁寧にお礼を言う。
「いえ、こちらこそお待たせしてしまって。」
二人きりになってはじめて交わす会話。
「叔母さんは面白い人ですね。」
「ああ、そうですね。でも、今日も気は遣ってたんだと思います。ああ見えて、叔母は緊張しいなんですよ。」
いつになく叔母は饒舌だった。そういうときは緊張しているのだ。陽子も似たようなところがあるので、叔母の気持ちはよくわかる。
「叔母さんと仲がいいんですね。」
「そうですね。友達みたいってよく言われます。歳は二回り位離れてるんですけどね。」
「僕は仲いい親戚とかあまりいないので、そういうのはちょっとうらやましいですね。」
伊藤健司は前を向いたまま、素直な感想を述べた。
そうこうしているうちに二人は901号室に入った。それほど広くはないが、ゆったりとしたソファが置いてあり、テーブルにはきれいな花が飾ってある。奥には大きなダブルベッドが見えている。ソファに座ると、なんとなく気まずい沈黙が流れ始める。
「陽子さんはデザイン関係でお仕事をされているんですよね。」
気まずさを打ち消そうと無理やり放った質問なので、健司も後の流れなど考えていなかった。会話がしぼみそうになるのを、必死に二人で食い止めようとする。陽子は自分がデザインしたWebページを伊藤健司に見せた。スマホを横からのぞき込む伊藤健司の横顔は、まさにおじさんそのものだと感じた。陽子がデザインしたWebサイトに感心したようで、伊藤健司はしきりに褒めた。
「すごくセンスがいいというか。すみません、センスがいいのは当然ですよね。」
「いえ、ありがとうございます。ここは、会社でも評価されて、私も気に入っているんですよ。」
以前、付き合っていた45歳の男とはだいぶ違う。どちらかというと、イケているおじさんだった彼と比べると、伊藤健司は野暮ったかった。ただ、勘違いしてはいけないのは、これは恋愛ではなく結婚を前提とした見合いなのだ。恋愛と結婚は別物。若いころは分からなかったが、ここ数年はそんな考え方にも陽子は馴染んできていた。
「陽子さんは今までに、お付き合いしたことがある男性とかいらっしゃるんですか。」
「ええ、まあ。もう5年くらい前の話ですけど。」
不倫だったことは伏せた。伊藤健司は20代の頃に一度だけ交際した相手がいたらしい。ただ、その後は出会いが無くて一人だったようだ。
「陽子さんは初体験はいつですか?」
「ふふ。結構いきなりですね。」
「すみません。でも、もしかしたら結婚するかもしれない相手のことは、良く知っておきたいんです。答えたくないなら答える必要はないですよ。」
さっきと打って変わって積極的だと陽子は感じた。初めての相手は高校の時の先輩だった。遊びに行った先輩の部屋での初体験だった。
「結構早かったんですね。でも、今どきはそんなもんか。高校生くらいなら会うたびにセックスしたんでしょう?」
「あはは、まあ、若かったんで。そうですね。うん・・・。」
セックスという言葉が出てきてドキッとしたが、真剣に質問してくる伊藤健司に対して真剣に答える。1年くらい付き合って、彼が東京の大学に進学したところで別れたことを話した。
「じゃあ、高校2年の6月から高校3年に上がる直前まで付き合った。」
「はい。そうなりますね。」
「その間、会うたびにセックスして。」
「うふふ。はい。」
エッチな話は盛り上がる。奥手だと言っていた割には、伊藤健司はエロい会話に積極的だった。うまく過去の話を引き出してくるので、陽子も過去の男性経歴をほぼ全て話してしまった。大学の頃の彼氏を含めると、今まで3人と付き合ったということ。そして、3人目は不倫だったことも。
「本当に知らなかったんですよ。奥さんがいるなんて言わなかったし。」
「でも、そのくらいの年齢なら、結婚していてもおかしくないですよね。全く疑わなかったんですか?」
伊藤健司は表情は全く変えずに、陽子に対して鋭い質問を投げかけた。面接官のような意地悪さを感じる。
「それは・・。」
本心を言えば、本当の事を知るのが怖くて確認しなかっただけ・・なのかもしれない。彼のほうから言わなかったことを理由にして、彼が既婚者かどうかはあえて無視していた。そして心のどこかでいつか奥さんと離婚して、自分のものになればいいと思っていた。そんな薄暗い本音を、伊藤健司に見透かされたような気がした。
「すみません、変な質問しちゃって。陽子さんは真面目な人ですよね。」
「うすうす気づいていた」そう言おうと思った瞬間に、伊藤健司が遮った。伊藤健司は笑顔を浮かべている。外見の野暮ったさからは、想像できないような洞察力の鋭さだった。何となく見透かされているような、取り調べのような会話だと陽子は思った。
「陽子さんはスタイル良いと思うんですけど、何かスポーツとかされているんですか?」
「特に何もやってないですね。着痩せするのかな・・。」
そんなことを言いながら、陽子はソファの背もたれから体を起こすと上着を脱いだ。背筋を伸ばすとブラウス越しにブラジャーが薄っすら透けている。
「最近食べ過ぎることが多くて、ちょっと太ったかもしれないです。」
「いや、全然そんなことないですよ。スタイル良いですね。」
そういうと伊藤健司は陽子のウエストあたりをそっと撫でた。
「お腹出てないですか?」
「全然。細いですね。」
背中とお腹を挟むように両手を添えて、しばらくその厚みを確かめる様にさすっている。男性に体を触られるのはどのくらいぶりだろう?
「シャツは・・脱ぎます?」
陽子が小声でジェスチャーをすると。
「そうですね。脱いでもらって・・。」
シャツのボタンをはずして、ブラウスを脱ぐとブラジャーだけになった。
「すごく肌が綺麗ですね。」
「ありがとうございます。」
見せつけたいわけではなかったが、肌の美しさには自信があった。そのまま腕を後ろに回してブラジャーも外す。
華奢な体に、ちぎった餅のような胸が張り付いている。姿勢を正そうと背中を反らすと、胸が前にせり出して、形の良い乳房の先端が上を向いた。
伊藤健司が品定めをしている間、陽子は壁の方に視線を逸らした。肌合わせでは、傷や病気などがないかを確認するらしい。友だちの話では、戦前は男性側の親族も同席していたという。
「あんまり、胸は無いんですよ。」
「そんなことはないですよ。すごくきれいです。」
陽子はコンプレックスである胸の小ささを自嘲した。細い身体にとって付けたような、小ぶりの乳房がプックリと盛り上がっている。左右に開き気味についた乳首の先端は、タバコのフィルターほどに大きくなっていた。
「なんか、恥ずかしいですね。」
じっと見つめる伊藤健司に視線を戻すと、笑いながら陽子は口を開く。
「大丈夫ですよ。誰もいませんし。」
もちろん二人以外は誰もいないが、そういう意味ではない。不倫を見透かされた上に、コンプレックスの胸まで見られてしまって陽子は参っていた。
「じゃ、スカートを脱いでもらってもいいですか?」
陽子はゆっくり立ち上がると、背中にあるスカートのホックを外した。スカートから足を抜くと、半分に折ってソファに静かに置いた。伊藤健司はパンティストッキングだけになった陽子をじっと眺めた。体を隠す布を失って、陽子は恥ずかしさで、太ももを擦り合わせる。
「なんか、変な格好ですよね。」
「とても、きれいですよ。」
ベージュのストッキングに白いパンツがぼんやり透けて見える。真ん中の小さなピンクのリボンが、ストッキングに押されて捻じれている。陽子はこの中途半端な格好が嫌いだった。早く下も脱いでしまいたい・・。
伊藤健司は背後から陽子に手を回すと、そっと柔らかく胸を揉み始めた。小ぶりな乳房は伊藤健司の手にすっぽりと収まって、クニュクニュと揉まれる胸は餅のようだ。
「お見合いって、なんかすごいですね。」
「すごいというと?」
「なんか、凄いじゃないですか。胸を揉んでらっしゃるし。」
「あんまり硬く考えずに、気軽に構えてください。」
昔から「小事に縛られて縁遠く」といって、見合いで相手をえり好みすると、いつまでも結婚できないということわざがある。不必要に恥ずかしがったりすると、縁がなかったということになりかねない。陽子が女としてもっている武器を、この場ですべて出し切らなければならなかった。
伊藤健司は陽子のお尻を触りだした。陽子に肩幅に足を広げさせると、パンティーの底の部分をそっと触れる。下着越しに伊藤健司の手の感覚が伝わってくる。伊藤健司の手が縦横無尽に這いまわって、陽子のパンストに包まれたお尻や足を触りまくった。
「伊藤さんエッチなんですね。」
「いやぁ・・」
笑って首を振る。自分は肌合わせをやっているだけ、とでも言いたそうだ。
「たしかに僕はエッチかもしれない。でも、生まれてくる子供のこともありますし・・・。」
エッチという言葉を拒絶のサインと受け取ったのか、伊藤健司は急に陽子を触ることをやめてしまった。
「正直言えば今日は楽しみでしたよ。嘘ついても仕方ないので本音を言いますけど。陽子さんはこういうの嫌いですか?」
「別に嫌いというわけではないですけど・・。」
自分のせいで空気が悪くなれば、それこそ「小事にとらわれて、縁遠のく」というもの。見合いをするからには、肌合わせは避けることができない。陽子にもそのくらいの分別はある。
「すみません、変な事言っちゃって。続けてください。」
陽子は気を取り直して、伊藤健司に続けるように促した。
伊藤健司は陽子を抱き寄せてキスをした。目を瞑っているとぬるっとした舌が入ってきたので、口の中に招き入れた。陽子がうっすらと目を開けると、伊藤健司が眼鏡越しにじっと陽子を凝視している。舌を絡ませながら、陽子も伊藤健司の目をじっと見つめ返した。陽子の口の中でくねる伊藤健司を舌を、同じくらいの力で陽子は押し返す。お互いにリズムをとるように、絡み合った舌が回転した。
モンブランの香りが陽子の口の中に拡がった。そういえば、伊藤健司はモンブランを食べていた。陽子の食べたイチゴのショートケーキのお返しも、伊藤健司にとどいているだろうか。
伊藤健司は陽子の歯茎を嘗め、上あごの天井を嘗めた。陽子の口から垂れただ涎は、首筋にまで達していて、胸元は赤く上気している。
伊藤健司が陽子の腰にあるストッキングのゴムに手をかけると、パンツの中に手を差し入れてきた。小さくてかわいいパンツの前が、ぼっこりと大きく膨らんだ。
「やだ・・」
「もう、スイッチ入ってますね。」
陽子は濡れていることはわかっていた。太い指が下着の中でうごめいて鳥肌が立つ。陽子はほとんど裸に近い状態だったが、伊藤健司はまだスーツのままだ。
陽子をベッドに横たわらせると、上着を脱いで伊藤健司も沿うように横になった。陽子の形のいいおっぱいの先端は上を向いていて、伊藤健司はそっと手を乗ると撫で始めた。手のひらに乳首が引っかかるたびに、甘い快感が背筋を伝わってくる。
「はぁ・・」
そういえば、陽子はまだシャワーを浴びていないことを思い出した。
「あの、ちょっとだけシャワーを・・」
「そうですね。すみません、気が付かなくて。」
脱衣所で一人になった陽子は、タオルを握って深呼吸をする。
ーはぁ、このままセックスするのかな・・。ここまで来たらもう引き返せない。
そんな思いが胸に去来する。「別にこれで結婚が決まるわけじゃないんだから、会うだけ会ってみない?」そんな叔母の言葉を思い出す。ここまできて陽子の心は揺れていた。
身支度を整えてベッドに戻ると、伊藤健司がパンツ一枚で待っていた。
「陽子さんは好きな体位とかありますか?」
「ええ・・そうですね・・やっぱり正常位かな。」
生まれて初めて、好きな体位とか聞かれたかもしれない。そして正直に答える自分に少し興奮した。伊藤健司は陽子の頭に手を回すと、再びキスをした。初めて会ってまだ1時間程しか経っていないが、陽子の口の中は伊藤健司の唾液で溢れていた。
不意に伊藤健司がキョロキョロし始めたので、どうしたかのか尋ねると避妊具を忘れてきたという。
「しまった・・。用意しておくつもりだったんですが、昨日は仕事が遅くなってしまって、つい買いそびれてしまいました。」
「私持ってるんで。ちょっと待ってくださいね。」
陽子はカバンから、繋がった2つのプラスチックの包みを取り出すと、伊藤健司に手渡した。
「すみません、情けないな。陽子さんは準備がいいんですね。」
コンドームを装着した伊藤健司は、陽子の足を持ち上げると間に割って入ってきた。楽しみにしていたという伊藤健司の言葉が、陽子の中で繰り返される。ピンク色に染まった伊藤健司の性器は、期待に大きく反り返っている。
「じゃあ、失礼します。」
そういうと先端を陽子の濡れた繁みにそっとあてがった。何度か割れ目に沿って上下させると、強く押し当ててきて、そのままめり込ませる。あの最初のぞくっとする感覚。
「・・・。」
準備の整った膣は、ズルズルっと伊藤健司を受け入れていく。ぴったりとお互いの腰が付くと、伊藤健司はしばらく馴染ませるように動かなくなった。ゆっくりと凹凸が馴染んでいく。その間、伊藤健司は陽子の首筋や顎に舌を這わせた。
耳たぶと穴を舐められると、くすぐったさで肩をすくめた。陽子の弱点であることを見抜くと、伊藤健司は執拗に耳を舐め続ける。
「あはは、くすぐったいです。」
「耳弱いんですね。もっと舐めましょう。」
そういうと、笑い声が喘ぎ声に変わるまで、伊藤健司は耳を舐めてくれた。首筋から背中にかけて電流のような、ビリビリとした快感が伝わっていく。
「はあ・・」
密着させた腰をゆっくりと引き抜くと、カリが陽子の内側を刺激する。
「んんっ・・。」
あと少しで抜けると思ったころで、再び沈み始める。陽子は少しのけぞって、上下の唇をかみしめた。ゴリゴリと肉同士が擦れながら、再び腰がピッタリと押し付けられる。性器から上がってくる快感と、会ったばかりの男を自分の最も深い所に招き入れた背徳感で、陽子の頭の中は白い霧がかかったように見通しが悪くなった。
「痛くないですか?大丈夫?」
伊藤健司が陽子を気遣う。陽子が黙ってうなづくと、ピストン運動が始まった。
ズブッ・・ズブッ・・
ゆっくりと腰を動かしながら、片方の腕で陽子の身体をがっちりと抱きしめている。空いた手で陽子の前髪をあげるようにおでこを押さえて、じっと顔を覗き込んできた。
「かわいいですね。」
「いや・・」
陽子は照れ笑いをしながら顔を背ける。腰を振りながら、なるべく子宮に近づこうと陽子に腹を押し付けた。
ー俺の女
陽子を抱え込む伊藤健司からは、そういうオーラがにじみ出ている。久しぶりにありついたであろう女の体を、味わいつくそうという気迫にあふれている。ゆったりとしているかと思うと、猿のように素早く数回打ち付けた。
「あああっ」
さっきまで控えめだった男は、その本性を現して陽子に欲望をぶつけてきた。陽子も自分が伊藤健司の獲物という自覚はあった。たまたま、叔母と伊藤健司の母親が知り合いだった。そして、お互いの姪と息子を引き合わせた。偶然の産物にすぎないこの出会いも、伊藤健司にしてみれば絶好の狩りの機会のはずだ。
うっすらと目を開けると、むくんだ伊藤健司の顔がある。その目は遠慮のない、強い視線を陽子に向けていた。伊藤健司は興奮しているようだ。そして、その興奮は陽子にも伝った。
ズブッ・・ズブッ・・
伊藤健司は黙々と腰をふって、陽子の中心に振動を刻み続ける。ゆっくりとしたペースだが、徐々に陽子を追い込み始めていた。陽子はきつく目を閉じて、じっと耐える。
陽子は友人の見合い話を聞くたびに、大変だなと思っていた。紹介だからどんな人が来るかわからないし、初めての人とでも裸で向き合わなければならない。自分もいずれ結婚したいが、そのときは恋愛で。見合いは他人事のように思っていた。
「それって、初対面の人とだよね。」
「そうよ、陽子はモテるからいいけど、私なんかえり好みしている場合じゃないのよ。」
「合ってすぐにでしょ?」
「まぁ、だいたいそうね。時間かければいいってものでもないし、特別事情がなければ1時間もしないうちににね。」
伊藤健司は陽子の乳房を揉み始めた。大きな手の中で、陽子の乳房はつきたてのお餅のように形を変える。グニャグニャと揉まれながら、伊藤健司は掴んだ乳首を吸う。
「はあん・・。」
見合いの話を聞いていると、ジンと痺れるような感覚がお腹に宿るのを感じていた。初対面の男とのセックスが、陽子の頭の中に拡がっていく。恋人でもない人とのセックス。モテるといわれた自分がお見合いをしている。まさか、こんな風になるとは考えもしなかった。
乳首を舌の上で転がされて、なかなか離してもらえない。
「ああん、あっ・・あっ・・。」
その間も伊藤健司の腰は止まることなく陽子を耕し、やがて訪れる歓喜の瞬間のために動き続けた。そして、その努力は実ることになる。陽子のお腹に灯った小さな炎は、大きなうねりになった。
「あああああん!」
陽子は上を向くと、首に筋をたてながら獣のように吼えた。
陽子は首から頬まで赤く染めて、伊藤健司のねっとりとした責めを受け止めた。
ズブッ・・ズブッ・・
友達から肌合わせの話を聞いてからというもの、陽子は自分に置き換えて妄想していた。まだ見ぬ将来の夫となる男の影を思い浮かべる。
「はあああん。」
恋人でも夫でもない、出会ったばかりの男との、即席の関係は陽子を興奮させた。妄想の男は陽子を激しく突き上げて、何度もイカせる。容赦なく巨大な怒張を振りかざして、昼夜を問わず犯し、そして孕ませる。その男の前ではすべてをさらけ出して、プライバシーはない。持っているもの、身に着けているもの、そして頭の中の考えすらもすべて奪われる。
ーもっと激しく、もっと、もっと突き上げて!!私を滅茶苦茶にして!!
そうやって自慰行為で果てるのだ。
陽子は腹から太ももにかけて痙攣が始まっている。もうすぐ行きそうだ。でも、完ぺきではなかった。そう、妄想と同じように、滅茶苦茶にしてほしい。妄想の影の男は伊藤健司となり、陽子の前に現れてくれた。あとは自分が一歩ふみだすだけだ。
「はあ、はあ・・も、もっと突いてください。お願いします・・。」
伊藤健司は少し驚いたようだったが、ニヤニヤと笑っている。
しまったと思ったが、もう遅かった。思い切って言ったセリフは、硬い響きを伴って消えていった。変な女と思われたかもしれない。
「へへ、陽子さん、意外と大胆なんですね。そんなことを言うなんて。」
そういうと、陽子の頭を抱えると、舌を絡ませてきた。
ヌチャヌチャ・・
妄想の中の男も、こんな風に荒々しいキスをしてきた。陽子は自分が言ったセリフに興奮した。自分の密かな妄想を、伊藤健司の前で演じた恥ずかしさと後悔。自分が壊れていく感じがした。
「わかりました。僕ができることならなんでもしますよ、陽子さん。」
陽子の言葉を受けて、伊藤健司はギアを上げて、より硬くなった怒張を陽子に突き立てた。
「あっあっあっ」
腰の動きに合わせて、声が揺れる。伊藤健司の腰の動きは、坂を駆け上がる蒸気機関車のように力強い。おかしくなりかけている陽子は、更に自分の内面を吐露する。
「お願い、もっと激しく突いてください。」
すでにカウントダウンは始まっていて、腹の底から欲の塊のようなものが上がってくる。口は半開きになって、陽子はまた野獣のような声を上げた。
「ああああああんん!!」
枕を超えてのけぞると、全身に痙攣が走った。頭の中は真っ白になって、何も考えられない。ただ、体全体が火山のように噴火したのだった。
「うがっ!」
伊藤健司も同時に果てた。陽子は腹と太ももを震わせながら、伊藤健司の腕の中でのけ反っている。
「はぁ・・はぁ・・大丈夫ですか?陽子さん。」
しばらくベッドで体を休めると、伊藤健司が冷蔵庫から飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
「すみません、1回しかできなくて。」
そういうと手のひらの避妊具を見つめた。2つ渡したので、2回するものと思ったらしい。
「2回分だと思いました?やだ。」
「ええ。それがマナーなのかなと。すみません、期待に応えられなくて。でも、もう一つは次に使わせていただきます。」
そういうと、伊藤健司は嬉しそうに財布にしまった。次回のチケットのつもりだったのかもしれない。しかし、陽子の中では次はなかった。もう一軒行こうという伊藤健司の誘いを、陽子はやんわりと断った。ロビーに降りて、鍵を返すと出口まできた。
「じゃ、今日はありがとうございました。」
「こちらこそ・・」
陽子がそう言いかけたところで、伊藤健司がいきなりキスをしてきた。
「やめてっ・・」
陽子は強引に抱こうとする、伊藤健司を振り払った。
「ごめんなさい。失礼します。」
そういうと陽子は逃げるようにホテルを後にした。

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